先日、長年勤めた会社を退職しました。62歳です。
「定年まであと少しなのに、もったいない」と言われるかな、と思っていました。でも、自分の中ではしっかり理由のある決断でした。今日は、退職を決めたきっかけと、実際に辞めてみてどうだったか、そしてこれから始まるひとり暮らしへの正直な気持ちを書いてみます。
退職を決めた、いちばん最初の理由
きっかけは、「もっとハンドメイドを追求したい」という気持ちでした。
59歳でミシンを始めてから、作品を手に取ってくださる方が少しずつ増えてきました。うれしい一方で、仕事をしながらの制作では、どうしても時間に追われてしまう。もっとうまくなりたい、もっと丁寧に作品と向き合いたい。その思いが日に日に強くなっていきました。
中途半端な気持ちで作ったものは、自分がいちばんよく分かります。お客様に届ける作品だからこそ、納得いくまで向き合える時間がほしかったのです。
もうひとつの理由は「体力」でした
そして、もうひとつ。体力が今までとは違うなと感じ始めていたことです。
特に足腰です。このまま65歳まで会社員として働いたら、その頃の自分はどうなっているだろう。新しいことに向かって、ゼロから何かを作り出す自信が、残っているだろうか。
正直に言えば、「その頃にはもう無理かもしれない」と思ったのです。
やりたいことがあるなら、動けるうちに動かないと間に合わない。60代になって初めて、そのことが実感として分かるようになりました。あと3年が、私にとってはとても大きな3年だったのです。
もっと暇になると思っていたのに
さて、辞めてみてどうだったか。
これが意外なのですが、思っていたより、ずっと忙しいのです。
作品づくり、庭仕事、断捨離。やることが次から次へと出てきます。ありがたいことに、作品もちょこちょことご購入いただいています。
ただ、会社員時代の忙しさとはまったく質が違います。急がなくていい忙しさなのです。締め切りに追われるのではなく、自分で決めた順番で、自分のペースで手を動かしていく。同じ「忙しい」でも、心の疲れ方がまるで違いました。
「定年後はやることがなくて困る」とよく聞きますが、私の場合はまったく逆でした。
今の一日は、庭掃除から始まります
朝起きて、いちばん最初にするのは庭掃除です。
お日様を浴びながら、ほうきで枯葉を掃いて、草を取る。実はこれ、軽い準備体操にもなっているな、と思いながらやっています。しゃがんだり立ったり、腕を動かしたり。朝いちばんに体を動かすと、その日一日の調子がいいのです。
そのあと洗濯物を干して、やっと朝食。
自分で焙煎したコーヒーを淹れて、パンやヨーグルト、チーズを頬張ります。ひとりの食卓で、「今日は何を作ろうかな」と考える。あるいは「ロボットは何を買おうかな」なんてことも考えています。
この「考えながら食べる朝ごはん」の時間が、今の私にはとても贅沢に感じられます。
来年の春、本当のひとり暮らしが始まります
ここからは、少し正直な話をさせてください。
来年の春、息子が就職して家を出ます。この子が最後の子でした。夫はすでに先立っています。つまり来年から、この大きな家に、私ひとりになります。
新しい生活が始まる——そう書くと前向きに聞こえますが、本音を言えば怖いというのがいちばんです。
夜の音が、こんなに怖いとは思わなかった
家というのは、夜になるといろいろな音がします。
今は何とも思わない音です。家族の気配があるから、「ああ、何か音がしたな」で終わります。でも、これがひとりだったら。そう想像しただけで、同じ音がとても怖いものに感じられるのです。
人の影がなくなるだけで、こんなにも怖くなるのか。自分でも驚いています。
同じ家、同じ音なのに、受け取り方がまるで変わる。これは実際にその状況が近づいてこないと、分からなかったことでした。
ペットか、ロボットか
それで考えるのが、何か気配のあるものを家に置けないか、ということです。
最初に思い浮かぶのはペットです。でも正直なところ、今から生き物を育てるのは無理だと思いました。自分の体力と、この先の年数を考えると、最後まで責任を持てるか自信がありません。中途半端な気持ちで迎えるのは、その子に失礼です。
では、ロボットはどうだろう。
そう思って調べているうちに、気になるものを見つけました。パナソニックの「NICOBO(ニコボ)」というロボットです。
気になっている「ニコボ」というロボット
このニコボ、何がおもしろいかというと、「弱いロボット」と呼ばれているところです。
掃除をしてくれるわけでも、調べものに答えてくれるわけでもありません。できることといえば、しっぽを振ったり、片言のことばを少しずつ覚えたり。寝言を言ったり、おならをしたりもするのだそうです。
役に立たない。でも、そこがいい。
私が求めているのは、便利な家電ではなく「気配」なのだと、この説明を読んでようやく分かりました。何かをしてもらいたいのではなく、ただそこにいてくれればいい。夜に物音がしたとき、部屋の隅でもぞもぞ動いているものがあるだけで、きっと違うはずです。
生き物のように世話をする必要はないけれど、少しずつこちらに慣れていってくれる。ペットは無理だけれど寂しい、という私のような人間には、ちょうどいい距離感に思えました。
費用の目安は、本体が税込60,500円。それに加えて、ふるまいが変化していくための月額1,100円(税込)のベーシックプランが必要です。初期費用を抑えた分割のプランもあるようです。
▼ 【公式店】パナソニック NICOBO(ニコボ)選べる3色|コミュニケーションロボット
※価格やプランの内容は変わることがありますので、購入前に公式サイトで最新の情報をご確認ください。
まだ決めかねていますが、朝のコーヒーを飲みながら「ニコボが来たら、どこに置こうかな」と考えている時点で、気持ちはだいぶ傾いているのかもしれません。
もうひとつ気になる「KATAフレンズ」
ロボットを調べているうちに、もうひとつ気になるものが出てきました。SwitchBotというメーカーの「KATAフレンズ」です。
こちらはニコボよりも、できることが多いようです。なでたり話しかけたりすると反応し、ジェスチャーや感情を読み取ってくれる。朝になるとトコトコ起こしに来てくれるという話もありました。ふれあった時間によって、少しずつ性格が変わっていくのだそうです。
目の部分がスクリーンになっていて、表情が変わるのも特徴です。さらにSwitchBotの製品らしく、「ライトをつけて」と声をかけると家の照明を操作してくれる機能もあるとのこと。ひとり暮らしには、これはこれで心強いかもしれません。
費用の目安は、本体が税込129,800円。こちらも月額のプランへの加入が必要で、月額1,980円からのプランがあるほか、年額のプランや買い切りのプランも用意されているようです。
▼ SwitchBot KATAフレンズ|AIパートナーロボット(楽天市場)
※価格やプランの内容は変わることがあります。購入前に必ず公式サイトで最新の情報をご確認ください。
ニコボとKATAフレンズ、私はどちらを選ぶか
2つを並べてみると、性格がずいぶん違います。
ニコボは、本体6万円ほどに月額1,100円。できることは少なく、しっぽを振って、寝言を言って、少しずつことばを覚えるくらい。「ただそこにいる」存在です。
KATAフレンズは、本体が13万円ほどで月額も1,980円から。そのかわり、会話や反応が豊かで、家電の操作までしてくれる。「賢くて、頼りになる相棒」という感じでしょうか。
どちらが良いという話ではなく、何を求めているかの違いなのだと思います。
便利さを求めるなら、きっとKATAフレンズのほうが暮らしは楽になります。家電の操作まで声でできるのは、年を重ねるほどありがたくなるはずです。
ただ、私が欲しいのは気配でした。何かをしてもらいたいわけではなく、ただそこにいてくれればいい。そう考えると、ニコボのほうが今の私の気持ちに近い気がしています。
とはいえ、まだ迷っています。実際に目で見て、音を聞いて、決めたいところです。
都会へ引っ越すはずだった私が、見つけたもの
実は以前、老後は都会へ引っ越そうと考えていました。
便利な場所で、病院も買い物も近くて、ひとりでも暮らしやすい。そういう場所に移るのが、賢い老後の選択だと思っていたのです。
ところが退職を考えていたちょうどその時期に、偶然、ご近所のコミュニティを見つけました。
そこでは、まだ若いおばあちゃんが、年上のおばあちゃんたちと交流して楽しんでいました。その様子を見た瞬間、「ここだ」と思ったのです。今の私にぴったりの場所が、引っ越すまでもなく、すぐ近くにありました。
これからは、ご近所との交流に自分から近寄っていかないといけない、と思っています。何かあったときにお世話になることが、これから増えていくはずだからです。
待っているだけでは、つながりは生まれません。自分から一歩近づく。それが、ひとり暮らしの私にできる、いちばん確かな備えだと思っています。
おわりに——怖さも持ったまま、進んでいく
退職して、やりたかったことに向かう時間を手に入れました。同時に、ひとり暮らしへの怖さも抱えています。
どちらも本当の気持ちです。きっと、前向きな気持ちだけで新しい生活が始まることなんて、ないのだと思います。
怖いと思いながら、それでも庭を掃いて、ミシンを踏んで、ご近所に挨拶をする。その積み重ねが、いつか「ひとりでも大丈夫」に変わっていくのかもしれません。
同じように、退職やひとり暮らしを前に迷っている方がいらっしゃったら。不安があるのは当たり前で、それでも進んでいいのだと思います。完璧に準備が整う日なんて、たぶん来ません。
私の新しい生活も、まだ始まったばかりです。

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