老後の備えはお金だけじゃなかった|60代が気づいた友達の大切さ

「老後のために、いくら貯めればいいんだろう」──50代の頃の私は、そればかり考えていました。雑誌の老後特集を読んでは通帳とにらめっこして、目標額を決めて、こつこつ貯める。老後対策といえばお金のことだと、疑いもしませんでした。

60代になり、ひとり暮らしになった今、はっきり言えることがあります。老後に本当に必要なのは、お金と、なんでも話せる友達。この両方です。そして友達のほうは、お金と違って、必要になってから慌てても手に入らないのです。

今日は、私が身をもって知ったこの話を、これから老後を迎える40代・50代のあなたに向けて書きます。

お金ばかり貯めていた、あの頃の私

現役の頃の私は、「貯めること」が老後対策のすべてでした。いくらまで貯めよう、あといくら足りない。数字だけを見て安心したり、不安になったり。

友達のことは、正直、後回しでした。大切だと思っていなかったわけではありません。ただ、「友達なんて、いつでも会えるもの」と思い込んでいたのです。仕事と家のことに追われて、誘いを断り、年賀状だけの関係が増えても、気にしていませんでした。

その考えが変わったのは、暮らしがガラリと変わってからです。

家に帰っても、誰もいない

夫は他界しました。子どもたちは成長して巣立ち、それぞれの家庭と生活を築いています。それはとても喜ばしいことで、親としての務めを果たせた証でもあります。でも、子どもたちの生活はもう完成されていて、そこに私が入る隙間はないのです。

家に帰ると、誰もいない。「ただいま」を言う相手がいない。夕飯を作りながら、ふと「今日、私は誰とも話していない」と気づく日があります。

友達がご主人と旅行や買い物に出かけて楽しんでいる話を聞くと、心から「よかったね」と思うのと同じくらい、正直、うらやましいという気持ちが込み上げてきます。通帳の数字は、この寂しさを埋めてはくれませんでした。

気づいたこと──お金だけあっても、話す相手がいなければ寂しい

あるとき、しみじみと考えました。これからどう生きていけばいいのだろう、と。そして気づいたのです。

お金だけあっても、この歳になれば仕事は簡単には見つからない。日中に行く場所がなく、話す友達もいなかったら──それは、想像していた「安心な老後」とはまるで違う、とても寂しい毎日だということに。

老後の備えとは、お金と「居場所」の両方を貯めておくことだった。私はお金の口座にばかり積み立てて、人とのつながりの口座は、ほとんど空っぽにしていたのです。

友達は「作る」もの。そして共感できるコミュニティで作るのが一番

そこから私は、意識を変えました。友達は「いるもの」ではなく「作るもの」。そして大人になってからの友達作りには、コツがあることも分かってきました。

それは、同じことに共感できるコミュニティに入ることです。

私の場合は、趣味のハンドメイドがきっかけでした。同じものが好きな人の集まりでは、初対面でも話すことに困りません。「その生地、素敵ですね」のひとことから会話が始まり、教え合い、見せ合い、いつの間にか、悩みも話せる関係になっていました。年齢も肩書きも関係なく、「好き」でつながる友達は、老後の何よりの財産です。

学びの場やオンラインのコミュニティにも参加してみました。最初は勇気がいりましたが、そこで出会った先生や仲間が、今の私の暮らしを支えてくれています。

40代・50代のあなたに、今からできる備え

もしあなたが今40代・50代なら、お金の積み立てと一緒に、ぜひ「つながりの積み立て」も始めてください。私の経験から、具体的にお伝えします。

1. 仕事以外の「居場所」をひとつ持つ

定年後になくなるのは収入だけではありません。毎日行く場所と、話す相手が同時になくなります。趣味のサークル、習い事、地域の活動。何でもいいので、勤め先以外に自分の名前で呼ばれる場所を、現役のうちにひとつ作っておいてください。

2. 「好き」を深めておく

共感できるコミュニティに入るには、まず自分の「好き」が必要です。手芸、写真、山歩き、読書。少しでも心が動くものがあれば、今のうちに深めておくと、それが将来の友達との出会いの入口になります。

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3. 誘いは、多少無理してでも受ける

50代の私に言ってやりたいことです。「また今度」と断り続けた誘いは、いつか来なくなります。友達との旅行や食事は、出費ではなく積み立てです。一緒に旅した思い出は、老後に何度でも引き出せる貯金になります。

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4. 聞き役にまわる練習をする

大人の友達作りで一番大切なのは、話す力より聞く力です。相手の話を「そうなんだね」と受け止められる人のまわりには、自然と人が集まります。これは今日からでも練習できます。

おわりに──寂しさを知ったから、伝えられること

私はいま、コミュニティで出会った友達と、少しずつ新しい暮らしを作っています。寂しい夜が消えたわけではありません。それでも、「明日あの人に会える」「今度これを見せよう」と思える相手がいるだけで、朝起きる理由ができるのです。

お金の準備は、たしかに大切です。でも、通帳の数字はあなたの話を聞いてはくれません。老後にあなたを支えるのは、お金と、なんでも話せる友達。どうかその両方を、今日から少しずつ、貯めていってください。

10年先を歩く先輩からの、心からのお願いです。

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