高額療養費が変わった|2026年8月診療分からの新しい上限額と年間上限

お金と保険の知識

「高額療養費の制度が変わったらしい」——そう聞いて、不安に思われている方も多いのではないでしょうか。入院や手術が必要になったとき、医療費の負担を抑えてくれる大切な制度です。

私は健康保険の仕事をしています。今回の見直しは内容が複雑で、窓口でも「結局いつから、何がどう変わったの?」というご質問をよくいただきます。今日はそこを、できるだけかみくだいて整理してみます。

まず結論:令和8年(2026年)8月の「診療分」から変わりました

いちばん大事なポイントからお伝えします。新しい上限額が適用されるのは、令和8年8月に受けた治療からです。

ここで注意していただきたいのが、「診療分」という言葉の意味です。

「診療分」とは、お金を払った月ではありません

高額療養費は、実際に治療を受けた月を基準に計算します。病院に支払いをした月でも、請求書が届いた月でもありません。

たとえば、こういうことになります。

7月に入院して、支払いが8月になった場合
→ 治療を受けたのは7月なので、古い(改正前の)上限額で計算されます。

8月に入院して、支払いが9月になった場合
→ 治療を受けたのが8月なので、新しい(改正後の)上限額で計算されます。

また、高額療養費は1日から末日までの1か月ごとに計算します。月をまたいで入院すると、それぞれの月で別々に計算されるという点も、覚えておくと安心です。

変わったことは、大きく3つです

今回の見直しで変わったのは、次の3点です。ひとつずつ見ていきます。

1. ひと月の上限額が引き上げられました

これまでより、ひと月に負担する上限額が上がりました。所得区分ごとに金額が変わっています。

2. 「年間上限」が新しくできました

これは新設された、うれしい仕組みです。

これまでは「ひと月いくらまで」という月単位の上限しかありませんでした。そのため、毎月の医療費が上限額に届かない程度でも、それが1年間続くと負担が積み重なってしまう、という問題がありました。

今回、1年間の合計にも上限が設けられました。年間の上限に達したあとは、それ以上の自己負担分が保険者(健康保険組合など)から還付されます。

ここでいう「年間」とは、8月から翌年7月までを指します。1月から12月ではないので、ここも間違えやすいところです。

長く治療を続けている方にとっては、大きな安心につながる見直しです。

3. 「多数回該当」の金額は、これまでどおりです

直近12か月のうち3回以上、高額療養費に該当した場合、4回目からは上限額がさらに下がる仕組みがあります。これを「多数回該当」といいます。

この多数回該当の金額は、引き上げられていません。これまでどおりの金額が維持されています。継続的に治療が必要な方への配慮です。

70歳未満の方:どう変わったか

実際の金額を、改正前と改正後で並べてみます。(かっこ内は多数回該当の金額です)

所得区分(年収の目安) 改正前
〜令和8年7月診療分
改正後
令和8年8月診療分〜
年間上限
(新設)
区分ア(約1,160万円〜) 252,600円+1% 270,300円+1%
〔140,100円〕
1,680,000円
区分イ(約770〜1,160万円) 167,400円+1% 179,100円+1%
〔93,000円〕
1,110,000円
区分ウ(約370〜770万円) 80,100円+1% 85,800円+1%
〔44,400円〕
530,000円
区分エ(〜約370万円) 57,600円 61,500円
〔44,400円〕
530,000円
区分オ(住民税非課税) 35,400円 36,900円
〔24,600円〕
290,000円

「+1%」というのは、決められた基準額を超えた医療費の1%を加算する、という意味です。医療費が高額になるほど、少しずつ負担も増える仕組みになっています。

70歳以上の方:どう変わったか

70歳以上の方は、入院と外来を合わせた上限のほかに、外来だけの上限(個人ごと)も設けられています。

区分 入院+外来
月額上限
年間上限 外来のみ
(個人ごと)
現役並みIII(約1,160万円〜) 270,300円+1%
〔140,100円〕
1,680,000円
現役並みII(約770〜1,160万円) 179,100円+1%
〔93,000円〕
1,110,000円
現役並みI(約370〜770万円) 85,800円+1%
〔44,400円〕
530,000円
一般I・II(〜約370万円) 61,500円
〔44,400円〕
530,000円 月22,000円
年216,000円
住民税非課税II 25,700円
〔24,600円〕
290,000円 月11,000円
年96,000円
住民税非課税I(年金収入約80万円以下など) 15,700円 180,000円 月8,000円

手続きは必要?

ここもよく聞かれます。

マイナ保険証をお持ちの方は、医療機関を受診する際に手続きなしで高額療養費の適用を受けられます。窓口での支払いが、はじめから上限額までで済みます。

マイナ保険証をお持ちでない方は、資格確認書または限度額適用認定証をご用意いただくか、加入している健康保険(保険者)に申請する必要があります。

なお、75歳以上の方は、2回目以降は申請がなくても自動的に口座に振り込まれる扱いになっています。

また、新しくできた年間上限を超えた部分については、いったん医療機関の窓口で支払い、あとから保険者を通じて償還払い(払い戻し)で支給される流れになります。

自分がどの区分か、どうやって調べる?

ご自身の所得区分は、マイナポータル資格確認書、または限度額適用認定証などで確認できます。分からないときは、加入している健康保険の窓口に問い合わせるのが確実です。

実は、この見直しは2段階で行われます

今回ご紹介した金額は、令和8年8月から令和9年7月までの内容です。

高額療養費の見直しは2段階に分けて実施されることになっていて、令和9年8月以降にもう一段階の見直しが予定されています。年収約200万円未満の方については、多数回該当の金額が引き下げられるなどの配慮も予定されています。

また、今回の改正では高額療養費のほかに、令和8年6月から、先発医薬品を希望した場合の自己負担の加算が増えたり、入院時の食費や光熱水費の負担が引き上げられたりしています。医療費まわりは全体的に見直しが続いている状況です。

おわりに——不安なときこそ、確認を

制度が変わると聞くと、どうしても身構えてしまいます。今回は上限額が上がった部分もありますが、その一方で「年間上限」という新しい支えができたことも、ぜひ知っておいていただきたいと思います。

特に、長く治療を続けていらっしゃる方にとっては、この年間上限が助けになる場面があるはずです。

なお、この記事は制度の一般的な説明です。ご自身の所得区分や、実際にいくらの負担になるかは、お一人おひとりの状況によって異なります。入院や手術の予定がある方は、事前に加入されている健康保険の窓口に確認しておくと安心です。

参考にした公的機関の情報

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