ハンドメイド作家として活動する中で、自分なりに大切にしていることがあります。今回はそれをまとめてみました。
誠実であること
材料費・制作時間を正直に反映した価格設定。「安くすれば売れる」ではなく、適正な価格で価値を理解してくれる方に届けたいと思っています。
丁寧な梱包と発送
作品と同じくらい、梱包にも気を使っています。受け取ったときの「開けてよかった」という気持ちを大切にしたいから。
お客様との信頼関係
一度購入してくださった方がまた来てくれる、それが一番嬉しいことです。その信頼を積み重ねていくことが、長く続けられる秘訣だと思っています。
検品は「自分が買う側だったら」の目で
発送前の検品は、いつも「私がお客様だったら」という目で行います。縫い目の曲がりはないか、糸の始末は残っていないか、金具はしっかり付いているか。ひとつひとつ手に取って、光にかざして確認します。
正直に言えば、検品ではねた作品を「もったいないな」と思うこともあります。でも、妥協した一点がお客様の手に渡ってしまえば、積み重ねてきた信頼は一度で崩れてしまう。60代から始めた私が短い期間でリピーターさんに恵まれたのは、この「はねる勇気」のおかげだと思っています。
写真と説明文は「正直に、詳しく」
ネット販売では、お客様は実物を手に取れません。だからこそ、写真は実物より良く見せようとしないこと。色味はできるだけ実物に近く、サイズ感がわかるように持った写真も載せる。生地の厚みや硬さ、ポケットの深さまで、文章で細かくお伝えします。
「思っていたのと違う」というがっかりを生まないことが、結局は一番の近道です。到着したお客様から「写真の通りでした」「想像以上でした」という言葉をいただけたときは、本当にうれしいものです。
お客様の声は宝物、でも振り回されない
いただいたご感想やご要望は、ノートに書き留めています。「ポケットがもう少し深いと安心」「肩ひもの長さを選べたら」──そうした声から生まれた改良が、いくつもあります。
一方で、すべての声に応えようとすると、自分の作りたいものがわからなくなってしまう。私の場合は「長く使える丈夫な帆布バッグ」という軸だけはぶらさずに、その範囲でお客様の声を取り入れるようにしています。軸があるから、お客様も「この作家さんはこういう作品の人」と安心して選んでくださるのだと思います。
これから作家を目指す方へ
ハンドメイド販売は、始めるだけなら誰でもできます。でも、続けていくには「誠実さ」がいちばんの土台になります。技術は後からついてきます。60代の私でもできたのですから、年齢は関係ありません。
焦らず、一つひとつの作品とお客様に丁寧に向き合うこと。それが、細くても長く続けられる秘訣だと、私は信じています。
「早さ」より「確かさ」を選ぶ
注文をいただくと、うれしくて急いで作りたくなります。でも私は、あえて制作日数に余裕を持たせています。急いで縫った作品は、どこかに必ず「急ぎ」が出るからです。
お客様をお待たせする分、発送のご連絡はこまめに。「本日生地を裁断しました」「仕上げの検品に入ります」──進み具合を一言お伝えするだけで、待つ時間も楽しみに変わるとおっしゃっていただけます。手仕事の「遅さ」は、丁寧さの証として堂々と伝えていいのだと学びました。
売上よりも大切にしている「ものさし」
販売を始めた頃は、売上の数字に一喜一憂していました。売れない週は「私の作品には価値がないのかな」と落ち込んだものです。
今は、ものさしを変えました。「今月、自分が納得できる作品を何点作れたか」「お客様から届いた言葉に、きちんと応えられたか」。数字は後からついてくるもので、追いかけるものではない──60代になったからこそ、そう割り切れるのかもしれません。
もちろん材料費や手数料の計算はきちんとします。どんぶり勘定では続けられませんから。でも心のものさしは、お金とは別のところに置いておく。それが、ハンドメイドを「苦しい仕事」にしないコツだと思っています。
おわりに
大切にしていることを並べてみると、結局はどれも「相手の顔を思い浮かべること」に尽きる気がします。この作品を手にする方が、開けた瞬間に笑顔になってくれるように。使うたびに、少しうれしくなってくれるように。
今日もそんなことを考えながら、ミシンに向かっています。
作品づくりの合間には、道具の手入れも欠かしません。ミシンの掃除と注油、はさみの研ぎ直し。道具を大切にする人の作品は、不思議と仕上がりにもそれが表れるものです。小さなことの積み重ねが、「この人から買いたい」につながっていくのだと思います。
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