📘目次
- 夫が旅立ったあとに訪れた、ぽっかりとした時間
- 開放感のあとの空白──“私、これからどうするの?”
- はじめてのドライブと、たいやきとの出会い
- 小さな冒険がくれた大きな気づき
- 新しい出会い、ハンドメイド、そして今の私
- ひとりになったあなたへ──大丈夫、あなたの時間はあなたのもの
1. 夫が旅立ったあとに訪れた、ぽっかりとした時間
夫が旅立ってからの私は、まるで何かを置き忘れたような気持ちで毎日を過ごしていました。
あれほど大変だった介護生活から解放されたはずなのに、喜びとも違う、不思議な気持ち。
確かに「やっと終わった」という安堵もありました。けれどそのすぐ後にやってくるのは、何をしていいのか分からない“空白の時間”でした。
2. 開放感のあとの空白──“私、これからどうするの?”
当時も私は仕事をしていて、それがどれほど救いだったか分かりません。
毎日決まった時間に職場に向かい、仕事を終えて帰宅する。疲れた身体で家事をこなして、また明日が来る。
週末といっても、することは買い出しと掃除くらい。そんな日々を繰り返していると、だんだんと心のなかがぽっかりと空いていくような感じがしてきたのです。
「私、このまま時間を埋めるだけの毎日でいいのかな?」
そんな疑問がふと頭をよぎったある週末、私はなんの目的もなく「ドライブに出かけてみよう」と思い立ちました。
3. はじめてのドライブと、たいやきとの出会い
実はそのとき、カーナビの使い方すら忘れていたんです。
「ナビ?どうするんだったっけ?」と一瞬迷いましたが、もうどうでもよくなって「まあいいかっ!」と出発。
どこへ行くでもなく、気ままに車を走らせていると、ふと道沿いに「たいやき」の看板が見えました。
「寄ってみようかな」と思い、何年ぶりかにたいやきを買って帰宅。
そのたいやきが本当に美味しくて……なにより「自分でドライブして帰って来れた」ことが嬉しくて、胸の奥に小さな感動が生まれたのです。
4. 小さな冒険がくれた大きな気づき
それから私は、週末になるとそのたいやき屋さんへ行くのがちょっとした楽しみになりました。
目的があるだけで、生活に小さなリズムが生まれ、張り合いが出てきました。
誰かと過ごさなくても、自分で自分を楽しませることができる──
そんな気づきが、私を少しずつ変えてくれました。
5. 新しい出会い、ハンドメイド、そして今の私
そのうち、たいやき屋の近くでやっていた手作り市に立ち寄るようになり、出会った作家さんと少しずつお話するようになっていきました。
そこからハンドメイドの世界に触れ、今では私自身も作品を作り、販売までできるようになりました。
“老後”と呼ばれるこの時間が、こんなにも豊かになるとは、正直、想像もしていませんでした。
6. ひとりになったあなたへ──大丈夫、あなたの時間はあなたのもの
もし今、私のように大切な人を見送り、時間をもてあましている方がいたら伝えたいです。
大丈夫、焦らなくていい。最初は小さなことでいいんです。
たとえば、いつもと違う道を歩いてみる。気になるお店に入ってみる。
それがやがて、自分だけの時間、自分の力で楽しめる人生の第一歩になります。
人に頼らなくても、自分を満たす方法はたくさんあります。
私にとってそれは、たいやきとドライブでした。
あなたにも、きっと見つかります。
その日が来るまで、どうか自分を責めず、ゆっくり歩いてください。
🍀おわりに
人生は、失うことで終わるのではなく、新しい形で始められるのだと今は思います。
夫との日々が私の土台なら、これからの時間は“私らしさ”を重ねる時間。
自分のペースで、好きなことを見つけ、心が喜ぶことを一つずつ集めていきたいです。
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