入院していてくれたら──家で看取るということ

自由に

目次

  1. もし入院していてくれたら
  2. 暑い部屋で半纏を着たまま
  3. 夫の「入院する」の一言
  4. 緩和ケア病棟へ──最後の入院
  5. 子どもたちの涙と沈黙
  6. 家で看取るという覚悟
  7. 今、伝えたいこと

もし入院していてくれたら

もし彼が、はじめから病院に入院していてくれていたら──
どれほど安心できたことでしょうか。

仕事から帰って玄関を開けるたび、私は緊張していました。
静まり返った家。


暑い部屋で半纏を着たまま

その空間の奥にいる彼は、真夏の暑い部屋で、なぜか半纏を着たまま座っていました。
クーラーも扇風機も使わず、汗をかく様子もなく、じっと動かずにいるのです。

テーブルには手付かずの水、そして食事の跡もなく。
「何も食べてない…」
そんな様子が、日を追うごとに当たり前になっていく日々でした。


夫の「入院する」の一言

私は朝、彼のために流動食を用意し、仕事へ向かいます。
昼休みに様子を見に帰ることもありましたが、それでも限界がありました。

そんなある日、彼がぽつりとこう言いました。

「入院…する」

自分からそう口にしたのは、それが初めてでした。
治療開始から5年──
がんセンターの医師には、すでに「緩和ケアを視野に」と言われていました。


緩和ケア病棟へ──最後の入院

紹介されたのは、自宅近くの病院。
緩和ケア外来のある病院でした。

医師は淡々とこう言いました。

「どうされますか?入院もできますよ。身体的苦痛を和らげる治療が中心です。」

それは、緩和ケア病棟への入院を意味していました。

夫は、数日後に静かに病室へ向かいました。
ただ、彼からは家族への言葉が、何もありませんでした。


子どもたちの涙と沈黙

子どもたちにとって、彼は怖い父親でした。
でも、どんなに厳しかったとしても、唯一無二の「父」だったのです。

その父が、言葉も交わさず病院へ行ってしまう──
その事実が、子どもたちの胸を締め付けました。

日に日に痩せていく父。
話すのも辛そうな姿を見つめながらも、子どもたちは何も言いませんでした。
ただ静かに、そばに寄り添っていました。


家で看取るという覚悟

「家で最期を迎えたい」
それが、彼の希望でした。

私たちはその思いを叶えたかった。
でも、その現実は決して甘くありません。
介護とは「覚悟」の連続です。

精神的にも肉体的にも、想像以上に家族にかかる負担は大きいのです。


今、伝えたいこと

あの日々を思い出すと、今でも胸が詰まります。
ですが、あのときの選択に後悔はありません。

どうか、家で看取るということが、どれほど大変か。
そのうえで、もし同じ道を選ぶ方がいるなら、
無理をせず、支えを借りながら進んでほしい。

最後に、彼が穏やかに旅立てたこと。
そして、その時間をともに過ごした子どもたちを、心から誇りに思います。


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「家で看取る」という選択の重さと温もり

「入院していてくれたら楽なのに」そう思ってしまうことへの罪悪感。でも、それは弱さじゃない。それだけ一生懸命に介護をしている証です。

家で看取ることを選んだ家族は、多くの葛藤を抱えながらも、最期まで寄り添い続けます。病院では得られない「家のぬくもり」の中で、大切な人が最期を迎えられる。その選択には、深い愛情があります。

介護は一人でするものではありません。地域の介護支援専門員(ケアマネジャー)や、訪問看護、訪問介護などのサービスを積極的に活用して、家族の負担を分担していくことが大切です。

介護の経験は、人を深く成長させます。辛さの中でも、家族の絆が深まっていく。「入院していてくれたら」と思った自分を責めないでください。それは正直な気持ちであり、それだけ真剣に向き合ってきた証です。あなたは十分に頑張っています。

家族の時間は、振り返ってみれば、すべてが宝物でした。辛かったこともあった。でも、ともに過ごした時間は何ものにも代えがたい。介護という経験が教えてくれた、人の温もりと絆の大切さを、これからの人生にも活かしていきたいと思います。

家で看取るという選択に、正解も不正解もありません。家族の絆と愛情の中で、その選択をした。それだけで十分です。あなたは精一杯やってきました。

看取りの経験を通じて、人の温もりと家族の絆の大切さを改めて感じました。これからの日々を、感謝の気持ちで丁寧に過ごしていきます。

家族と過ごした時間は、永遠に心の中にあります。これからも、温かい気持ちで毎日を歩んでいきます。

これからも、丁寧に前へ進んでいきます。

今日も感謝とともに。


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